以下(株)TKC 発2003年12月号発行”戦略経営者”より

「黒字決算」のための財務戦略――システム事例2
継続MASユーザー事例
株式会社アドテックシステム

経営者の面子にかけて
毎期「黒字」を達成

人材と技術が成長の原動力――。こう語るのは、制御・通信系のソフトウェア開発を得意とするアドテックシステムの山 岡 弘 政 社長。設立以来、品質と納期の確かさをウリに「黒字経営」「無借金経営」を続けている。そうした財務体質を支えているのがTKCの『戦略財務情報システム(FX2)』と『継続MAS』だ。そこで、山岡社長と顧問の日本パートナー税理士法人・東京本部副本部長の奈良信城氏に、その活用法を聞いた。

 

制御系と通信系のソフト開発を得意とする


制御と通信系のソフト開発を得意とする「技術者集団」

――ソフトウェアの受託開発を行っているとのことですが、その内容を教えてください。

山岡: 設立以来、当社が得意にしている分野は、制御系と通信系のソフトウェアの設計開発です。具体的には、制御系は(1)X社の「地上デジタルチューナー」のソフト開発、(2)Y社の放送局用機器に組み込まれるエンコーダ制御処理のソフト開発、(3)Z社の水道局監視システムなどのソフト開発を手がけています。とくに(3)に関していえば、各自治体が運営管理している水道施設をコンピュータで集中監視するというものです。一方、通信系は、海外向け携帯電話のソフト開発を大手電機メーカー経由で行っています。

山岡弘政社長

――最近の業績は……。

山岡: 前期(2003年3月期)の売上は約2億6000万円、今期は3億円を見込んでいます。ちなみに自己資本比率は91%です。陣容は、システムを設計するシステムエンジニア(SE)が10名、それをプログラミングするプログラマーが17名です。主な取引先は4社で、だいたい一つの仕事が終わったら、また次の仕事がくるという流れで請け負っています。開発期間は長いもので2〜3年、短いものは半年程度です。昔は受託(持ち帰り)が100%でしたが、今は受託と先方(取引先)に行って設計開発するケースが半々くらいです。

――何を武器にして他社との差別化をはかっているのですか。

山岡: 技術力です。これはいかにして納期を守り、かつバグ(正常に動作しない)を発生させないようにするかです。このため、社員教育・研修(毎年『COMDEX』『CeBIT』など海外視察実施)には力を入れるとともに、平成12年にはISO9001を認証取得しました。
 また、採用に関しても情報処理の資格を持っている人をできるだけ採るようにしています。というのも、昔と違って、今は取引先がプログラマーを面接し、その技術レベルをチェックしたうえで発注するやり方に変わってきているからです。

 

取引先別の業績管理で利益率を高める

――平成3年に『FX2』を導入されたそうですね。

山岡: ソフトウェア会社なので、その辺の抵抗は全然なく、日本パートナーさんに紹介されてすぐに導入しました。

奈良: 山岡社長の奥様が経理担当役員で、自ら『FX2』にデータ(領収書など)を入力しています。領収書の枚数は多い月で約120枚。毎月10日前後には前月の試算表ができており、その頃に巡回監査にうかがい、「数字」をチェックしています。

山岡: いわゆる「小口現金」に関する経費は日々入力していますが、売上に関しては原則「検収後」に立てます。ソフト業界では、あくまでも仕事がすべて終わった段階で検収するのが一般的です。しかし、これでは開発期間が長期の場合、その間お金が入ってこないので、今は取引先に協力していただき、3ヵ月ないし1ヵ月単位で検収してもらっています。売上は「一人月いくら」をベースにして請求します。

奈良: 最初に仕事を受けるとき、見積書を出します。「SEは一人につき月にいくら、プログラマーは月にいくら」という具合に見積書を出します。したがって、仮にある仕事の開発期間が半年間で、3ヵ月ごとに検収する場合、先方への請求書はそのときに発行しますが、『FX2』には見積書に基づいて毎月売上を計上しています。

山岡: そうしないと見通しが立たないからです。実際、大きなズレはありませんしね。

――部門別の業績管理は行っているのですか。

奈良: どの会社から仕事をいただいているのかをタイムリーにつかむため、取引先ごとに分けています。

山岡: 過去に取引したところも部門に入れているので、20部門くらいあります。このうち主要4社で、年商の8割程度を占めています。

――御社の場合、製造業と違って、材料を仕入れるわけではないので、変動費というのは何ですか。

山岡: 外注費ですね。ほとんど発生しませんが、たまに忙しくてうちだけではこなしきれないとき、外部の方にお願いすることがあります。したがって、売上イコールほぼ粗利益といっていいでしょう。

奈良: プログラマーは一つの部門にはりついて行いますが、SEの人はA社とB社の業務管理など2部門以上にまたがるケースがあります。この場合、本来ならAとBの仕事に関わった時間によって、給与を両部門に配賦すべきですが、現在は最も作業量の多い部門に計上しています。

山岡: 受託開発の一番いいのは、そこです。つまり、仮に請負単価が安くても、一人で複数の仕事をやれば粗利益が増えます。客先ですと時間を拘束されますが、持ち帰りであればAとBの仕事を夜中までやっても別にかまいませんからね(笑)。

――よく外食産業で指標として使われる「人時生産性」(一人時当たりの粗利益)をどう高めるかが成長のポイントということですね。業界では、ソフト開発に支払う単価というのは決まっているのですか?

山岡: 相場はピンキリです。SEの能力、仕事の内容(難易度)、お客様の予算によって単価は違ってきます。以前であれば高額な金額での仕事が多かったのですが、不景気の影響もあって、みなさん開発費が少なくなり、昔の半分というケースも多くなっています。


 

予実管理を徹底すれば問題点を発見できる



――『継続MAS』で次期の予算を立てているそうですが、具体的にはどのように行っているのでしょう。

奈良: 毎年、山岡社長の方でかなり緻密な予算を作成しており、それをまず『継続MAS』に落とし込みます。その際《ツールボックス》の機能を使って勘定科目ごとに積み上げていき、さらにそのデータを『FX2』に月別登録して、予実管理するというやり方です。

監査担当の
奈良信城副本部長

山岡: 「出ていくものは多く、入ってくるものは少なく」という方針で予算を作成しています。今のような経済環境のもとでは、できるだけ厳しくみた方がいいからです。設立以来ほぼ一貫して「黒字」なので、経営者の面子にかけても毎期黒字にしたいという思いがあります。

――とくに予算を立てるときの難しさは何ですか。

山岡: 売上をどう確保するかです。昔は3年くらい先までの仕事がみえていましたが、今はなかなかそうはいかない。リーダー(6名)には、それぞれ自分が担当する取引先ごとの売上目標を持たせており、それをトータルしたのが全社の売上予算になります。

奈良: C社はDリーダー、E社はFリーダーというふうに担当が決まっており、彼らのもとにプログラマーが数人つくわけです。あるいは大きなシステム開発の場合は、リーダーが2、3人集まり、一つのチームを作って請け負うこともあります。

――業績管理では、主に何をチェックしていますか。

奈良: 一番は売上(全社)が予算に対して、現在どうなっているかどうかです。第二は、前年同期に比べてどの部門の売上・限界利益が増えているか落ちているかをチェックしています。

山岡: 毎月「数字」が刺激になっています。「通信簿」をみるときのように、ビクビクしながら試算表をみていますね(笑)。「今月は売上が予想以上に多かった」とか「経費を使いすぎた」など一喜一憂し、気持ちにメリハリをつけています。実際、今年は不景気の影響で4、5、6の3ヵ月間は仕事があまり入らず厳しかった。が、逆にそれを発憤材料にして新規開拓を行ったところ、ある会社のソフト開発を請け負うことができました。

奈良: 現状を突破する手立てを『継続MAS』と『FX2』が教えてくれている、ということです。

――ソフト会社の業績は、まさにヒトしだいといえますが、社員のモチベーションを高めるためにどういうことを行っていますか。

山岡: 業績・実績に応じた賃金で報いています。リーダーの場合は「売上目標」に対してどこまで達成したかどうかを判断材料にしており、プログラマーの場合は「能力」です。同じ年齢・キャリアでも、人によってアウトプットするスピードなどが違うため、その辺をよくみて、賞与に反映しています。「経常利益率15%」を会社の目標にしていますので、それをクリアすれば毎年決算賞与を出しています。

奈良: 労働分配率は約70%で、同業者の黒字企業とだいたい同じ水準です。

一昨年から行っている
         「リゾート・オフィス」

山岡: さらに社員のやる気を促す手段として、一昨年から「リゾート・オフィス」を行っています。これはグァムのコンドミニアムを一ヵ月間借り切って、そこをオフィスにするというものです。グァムは3時間ほどで行ける距離ですし、インターネットでつなげば仕事に支障はありません。2週間交代で、昨年は6名が行きました。宿泊費などの経費はかかりますが、仕事を趣味のように楽しくできれば生産性は高まります。
(本誌・岩崎敏夫)
会社データ

名 称
株式会社アドテックシステム
業 種
ソフトウェアの受託開発
社 長
山岡弘政
設 立
1985(昭和60)年9月
本 社
東京都新宿区新宿5-6-1
T E L
03-3352-8480
売上高
3億円
社員数
27名
URL 
顧問税理士
日本パートナー税理士法人
東京都千代田区神田駿河台2-5
03-3295-8477